大判例

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札幌高等裁判所 昭和33年(く)11号 決定

少年 S

(抗告の)所論は、まず、原審が少年の事実上の監護者である少年の実兄Tにつき事実の調査をなさずまた同人を審判期日に呼び出さず、ついにこれに本件審判につき意見を開陳する機会を与えることなくして本件の審判をした点において、決定に影響を及ぼす法令の違反があると言うのである。そこで按ずるに、少年審判規則第二五条第二項に、少年保護事件の審判期日には少年の保護者を呼び出さなければならないとの規定があり、少年法第二条により右にいう保護者が法律上監護教育の義務ある者及び少年を現に監護する者を指すものであることも明らかであるが、同規則第三〇条が保護者は審判の席において裁判官の許可を得て意見を述べることができると規定し、その意見開陳を裁判官の許可にかからしめている点ならびに保護者の審判立会に関する上叙の規定は少年に対する審判の適正妥当を担保し且つ保護者の少年補導に対する協力を確保して少年の権利を擁護する方策として採択されたものであることが少年法規全体から容易に帰納し得る点に鑑みると少年に父母の如き法律上の監護教育義務者の外に現に監護を行う事実上の保護者がある場合において、審判期日にそのいずれを呼び出すかは当該係裁判官において合理的に裁量決定し得べく後者の干与が少年の権利擁護上強く要請される特段の事由のない限り前者の内一人を呼び出せば足ると解するのが相当である。今本件につきこれを観るに、原審判調書によれば少年の実母である抗告人が少年の保護者として原審の審判期日に出席し裁判官の許可を得て少年の審判に関し意見の申述をしていることが明らかであつて一件記録(少年調査記録を含む)上、右Tが少年を事実上保護しており同人をして少年の審判手続に于与せしめなければ少年の権利擁護上重大な影響を及ぼすと推断すべき特段の事情はこれを認め得ないばかりでなく、却つて抗告人が前記意見開陳に際し右Tが現に少年の監護に当つている事実につき一言も触れていないことや、Tが昭和八年九月生れの若年者であることが認められるのであつてこれらの事実に徴すればむしろそうでないことが推知される。

されば既に実母たる抗告人が前示の如く審判に干与させられている以上前記Tに審判に干与の機会が与られなかつたといつて原審の措置をもつて審判手続に違法ありとなすを得ない。

(裁判長裁判官 豊川博雅 裁判官 羽生田利朝 裁判官 中村義正)

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